「2日で1曲作ってほしい」と言われたら ~締めきりを設定して曲を作ろう(その2)~

締めきりまで48時間しかない……

こういう無茶な注文もたまにある。

提出の期日は7日後だけど、他の作業の関係で時間が取れないケースもあるだろう。

立場にもよるけどなかなか「そんなの無理だ」とは言いにくい。それに調子がいいときなら、2日で1曲完成させるのは不可能ではない。

だいぶ昔だけど、ぼくは某大手のレコード会社からの依頼で
「1曲作ってほしいんだけど」
「いいですよ、いつまでに?」
「明日の昼までに」
ってことがあったと聞いたことがある。(※本当です)

無理をするだけのメリットもある

きみが駆け出しのミュージシャンの場合、断るのは難しい。
『マジかよ。きついなあ……』と思うかもしれないけど、こういう状況はチャンスでもあ。

タイトなスケジュールの場合、中堅やベテランのクリエイターの中には、『うまいこと言って依頼を断ったり、ストック曲のみ提出して済ませる』人もいる。きみは、できるだけ相手のリクエストをばっちり意識して曲を作ろう。

「やむにやまれず無茶な注文をしたときに、あの人はきちんと対応してくれた」と相手が思ってくれるかもしれない。

的からずれた曲ばかり集まる中で、リクエストに沿った曲があれば、きらりと光ることもあるだろう。

引きうけたら、締めきりはかならず守る。クオリティに満足がいかなくてもとにかく提出する。

前回の記事で『2曲作る』提案をしたが、正味の作業日数が2日以下となるとこれはむずかしい。どちらも中途半端になる恐れがあるから、最初の段階で『1曲だけ形にする』方針を選択する。

しかし、時間がないからといって、あわてて作曲に取りかかったりしないほうがいい。
まずは落ちついて段取りを考えよう。

(注)以下に解説することは、締めきりまで七日以上ある場合でも流用することができる。各種の条件に合わせて、ケースバイケースで調整してほしい。

逆算する

曲を仕上げるまでにはいくつかの工程がある。
『今回リクエストされた曲の場合、それぞれどのくらい時間が必要か』書きだしてみよう。

『最低限のクオリティをキープするためには――』と考える。

ここでこれまでの経験がいきてくる。自分なら各作業にどれぐらいの時間が必要か、なんとなくは予想がつくはずだ。

(もし今回はじめて取り組むなら、ストップウォッチを用意しておこう。各作業にかかった時間をメモする)

具体的な時間割り

ぼくならこういう感じで時間配分をする。
(ゴールから逆算する形で、時間には幅を持たせてある)

提出する時間

・依頼者にメールを書いて送信。……30分
(作業の終盤はヘトヘトになっているかもしれない。ミスがないよう、先に相手のメールアドレスと文章と用意する)

・曲データをサーバーにアップ。……30分
(URLにまちがいがないか必ずチェックする)

整える時間

・ミックス作業。その後バウンスして2ミックスへ……3時間
(ミックス作業は、仮眠を取ってから行う)

作る時間

・アレンジ……10時間
(ドラム、ベース、ギター、キーボード、シーケンス、その他。最短距離で行くために、手を付ける前にできるだけ具体的なイメージを描いておく)
(今回は曲の構成は最小限にする。「サビ→間奏→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→大サビ→サビ」)

・仮歌録音……2時間

・仮歌を録音するための最低限のオケ作り……1.5時間

・仮の詞……30分(サビだけでも可)

・作曲……未定

休む時間

・睡眠……8時間

・休憩……未定

・食事、食事後の休憩……2時間×4回で8時間(昼夜)。朝は30分×2で1時間。
(食事のあと2時間は頭が働かない。仮眠を取るなりして心身を休める)

・風呂、その他……1時間

ここまでの合計時間

ここまで合計すると36時間。2日で48時間あるとすると、12時間あまる計算だ。

これを食事後の休憩とは別の、『作業のあいまの休憩』と『作曲』に割りふる。

※ぼくは「作曲」と「作業の合間の休憩」にあてる時間は最後に調整する。他の工程はある程度、必要最小限の時間が決まっているからだ。

締めきりまで3時間しかないとしたら……

上記ふたつに割り振る時間が明らかに足りない場合は、他の工程の作業時間を少しずつ調整する。

それでも難しい場合は、思いきって工程をカットする。

極端な話「いまから三時間後に提出して」と言われたら、ギターかキーボードの弾き語りにする。これでアレンジやミックスにかかる時間が大幅に減る。

作曲と休憩の時間配分

12時間の配分についてだけど、ぼくなら休憩6時間、作曲5時間、あまり1時間とする。

48時間のうち、睡眠に8時間、食事と食後の休憩に9時間、風呂に1時間使う計算だ。

『休む時間が多すぎる』と思うかもしれないが、これでも足りないぐらいだとぼくは思う。

創作において一番大切なのは、きちんと休むことだ

創作活動は大量のエネルギーを消費する。

休憩はたくさん取ろう。

休めば心身は回復する。そしてできるだけいいアイデアが出す。いいネタがあれば、迷うことがない。体調がよければ作業は早い。疲労している時と比べてミスも格段に減る。

各項目の作業時間は、状況によって増減する

曲によって、アレンジの作業時間は大幅に変わる。
いつも作っているタイプの曲なら、作業も早い。

ずっとストリングスが鳴っているようなバラードとなると、
「最低限のアレンジ」といっても、どうしても時間がかかる。

人によっては、

  • ギターの演奏を友人に依頼
  • 仮歌を友人に依頼

などの項目が追加されることもあるだろう。

このあたりは、ケースバイケースになる。自分の状況に合わせて、作業予定時間を書きだしていこう。

不測の事態に備える

交通事故などのトラブルは仕方がない面もあるが、それ以外の事柄にはできるだけ対処しよう。

パソコンなどのメイン機材は、トラブルに備えてサブセットを用意する。(すぐに作業が開始できるよう定期的にメンテを行う)

データ消失は避けたいから、自動で定期的にバックアップを取るシステムを組む。(作業中はクラウドにもデータを保存したい)

ストック曲をカテゴリ別に分けてナンバリングし、他人が見てもすぐにわかるようにしよう。(きみが入院した場合、家族、パートナー、友人に曲提出の代行を頼める)

スケジュール作りが完了したら

キーボードに向かう。もしくはギターを抱える。
そうしたくなるかもしれないけど、ぼくならまだ楽器は触らない。

ストップウォッチを持って、外に出る。30~40分程度、散歩をする。(散歩は作曲時間としてカウントする)

散歩をしているとき、音楽は聴かない。できるだけ静かで、緑が豊かなところを歩く。

意識は自然と、これから取りくむ曲へ向かう。ふだんとはちがうなかば興奮したような状態だ。どんな曲にするか、おおまかなイメージはあっても、細かい部分では無数の選択肢がある。

この状態を一定時間キープする。無意識に、きみの精神は取捨選択をくり返す。そういう時間を確保する。そのほうが、作業がスムーズに運ぶ。(ぼくの場合は)

いきなり楽器を持って作曲をはじめてしまうと、その瞬間鳴る音に意識が集中してしまう。そこそこいい感じの断片ができたりすると特に危険だ。それこだわって、他の選択肢が見えなくなってしまう。

そういう事態を避けるために、いったん楽器から遠ざかる。

散歩 その2

歩いていると、自分の意識が勝手に回転する。意識が勝手にあれこれ考えるのに任せていると、複数のアイデアが浮かんでくる。

具体的なフレーズが出てくることもある。他にも、

  • ある曲(過去の忘れられている名曲)を参考にしよう
  • 「~~」のピアノをモチーフにしよう
  • あの映画のあの場面でかかる曲、というコンセプトにしてみよう
  • サビの歌詞は「~~」にしよう

など、部屋にいたときには思い浮かばなかったようなアイデアが、少なくともひとつかふたつは見つかるだろう。それらを簡単に、メモしておく。

「複数の選択肢がある」と心強い。
「あれがダメならコレ。コレもダメならアッチを試そう」と思える。

どれを試してもうまく行かないときは、そのなかで一番マシなものを採用する。

『どのネタがいい曲に結びつきそうか』という選択は、経験値で変わってくる。経験を積むことで次第にぼんやりとつかめてくるはずだ。

ダーヤマに宣言して曲を作り、それを聞かせる

ここまで読んでくれたらわかるだろうけど、やはり経験が物を言う。だからこそ早いうちから『締めきりありき』の創作に取り組むべきなんだよね。

そして、どれだけクオリティが低くなったとしても『期限までに提出すること』が最優先だ。いまアマチュアで、経験としてトライする場合、提出先はバンド仲間でも友人でも、家族でもいい。

『まあいっか…………』を避けるために、自分以外の人と締めきりを共有することが重要だ。(多少でもプレッシャーがかかる。これもいい効果を生む)

家族に聞かせるのは恥ずかしい。仲間もいない! という人は、ぼくに聞かせてくれてもいい。

その場合は、最初にこのサイトの問い合わせフォームに宣言を書きこんで送信してほしい。

『はじめまして。~~といいます。一週間後までに~~な曲を作って提出します。どんなにショボくてもとにかく出します』という感じだ。

期日までに、曲を作り、どこかにアップする(ファイルをやりとりするための無料サービス、YouTube、Googleドライブなどを利用する)。そのURLを再度フォームから送信してほしい。

時間に余裕があれば、曲を聞いた感想をメールに送るよ。