ミュージシャンにとっても、メモ帳は必須のアイテムだ。
面倒だと感じるかもしれないけど、長い目で見るとはかりしれないメリットがある。
目次
ミュージシャンがメモを取る3つのメリット
- 大切なことを忘れずにすむ
- 暮らしが楽になる
- 信頼を得る最初の一歩になる
後半のふたつは、特に重要だ。
たとえばバンド練習で
たった三、四時間の練習でも、毎回これぐらいの『忘れてはいけないこと』が発生する。
- 次回のスタジオ練習の日時
- その予約を取るメンバー
- 次回、持っていくもの(ふだんは持ち歩かないエフェクター、貸すことになった物品)
- 次回までに用意するもの(作業中の曲のコード譜、リフのネタ三種、Bメロの別案)
- 今回の練習で参考にすることになったミュージシャンやバンド、曲の名前
- ちょっとした計画(三ヶ月後にライブをする。ライブハウスのリサーチが必要、など)
これらをメモ無しでおぼえていられる自信が、ぼくにはない。
アマチュアミュージシャンのなかには何度注意してもメモを取らない人がいるけど、よほど記憶力に自信がある人以外は書き残した方がいい。
定期的に集まって練習するわけだから、そのたびに約束とか、決めごとは増えていく。
他の人がやらないからこそ
もしかしたらきみのバンドのメンバーは、みんなまったくメモを取らないかもしれない。
だとしたら、きみは絶対に記録を取るべきだ。
そのときははっきりおぼえていることでも、半年も経つと記憶があいまいになる。お金の配分やライブの予定、オリジナル曲リリースまでのスケジュールなど、『絶対に忘れたりしない』と自信満々だったことも、三ヶ月も経つとかなりの割合で忘れる。そして結局みんな、きみのメモにたよるようになる。
少しの手間は受け入れて、メモを取ろう。そういうしっかり者がひとりいるかいないかで、バンド活動の質は変わってくる。
数百円のメモ帳とペンがあればできる。あとはクセにするだけだ。楽器の演奏とおなじで、すぐに慣れる。
きみと仲間の将来に、きっと大きなプラスになる。
メモを取れば、日々の暮らしが楽になる
メモを取ってしまえば、いったん書いた内容を忘れられる。
そのぶん頭の中にスペースが生まれる。
これまでメモを取る習慣がなかった人には想像できないかもしれないけど、本当に頭がすっきりして、心が楽になる。
ほかのことに集中して取り組める。新しいアイデアも生まれやすくなる。
約束や大切な発見、頭をよぎるアイデアは、日々増えていく。メモを取らずに放っておくと、頭がそのうちパンクする。(もしくは忘れてしまう)。自己防衛手段として、メモを取ろう。
重要な約束も、ちょっとしたネタも、なんでもかんでもとにかく書いておこう。
しくじれない相手と話すとき
レコード会社の重役や制作会社の社長、プロデューサー、ディレクター、先輩のプロミュージシャン――そういう人と話をするときは、必ずわきにメモ帳とペンを置こう。
具体的な日時とか、助言、約束、キーワードが出てきたら、文字にして残す。
メモは、ごく簡単に記入する。
相手を待たせないようにするためだ。重要なポイントやキーワードだけ、さっと書く。
文字が汚くてもいい。暗号みたいになってもかまわない。あとで見かえしたときに、きみがその文字をきっかけに話を思いだせればいい。
このたった数文字のメモを取るだけで、『約束を忘れる』ことを防げる。
約束には『今度は来月の四日、十九時に会おう』というスケジュール関連のものの他に『今度あれを持ってきて』『できたらこれをやっておいて』などの細かいものもあるだろう。
相手がきみにとって重要な人物であるなら、そういう小さな約束もおろそかにはしたくない。万全を期すために、さらっとメモを取ろう。
メモする行為は信頼につながる
相手は、話の内容を書きのこしているきみの姿を見ている。
言葉や態度にあらわさなかったとしても「こいつはオレとの会話を重要だと感じて、忘れないように手間をかけているな」と考える。
簡単なアポイントメントだけのやりとりだったとしても、その場でメモを取れば、『社会人として、最低限必要なことはきちんできるやつだ』と評価される。
この観点から見ると、『忘れるかどうかは関係なく、メモを取らないのはヤバい』と気づくはずだ。
相手の立場になってみればわかる。
メモを取らないってことは、『いま話題になっているこの話を、自分はおぼえる気がない。重要だとも思わない』と宣言しているようなものだ。きみにその気がなかったとしても、相手にそう取られる危険がある。
実行することで、相手との距離がぐっと縮まる
きみが重要だと考えている人物からアドバイスをもらったら、その場でメモを取ろう。そして、かならず実行しよう。
- まとはずれな意見だな
- 興味が持てない
- それはもう試したよ
という内容だったとしても、実行する。
これは大きいよ。
たとえば、『きみの曲を聞いたけどね、●●の●●というアルバムを聴くと参考になると思うよ」と言われたら、急いでそのアルバムを入手して、チェックする。
(まったく興味がないミュージシャンの曲だとしても、そうする)
もしくは、『Bメロは8小節じゃなくて4小節でいいんじゃないかな』と言われたら、面倒でもBメロを半分に修正したバージョンを作ってみる。
次に会ったとき、こちらからその話を振る
メモして、実行する。そしてふたたびその人と会ったときに、こちらからその話題を出す。
「前回教えていただいた●●を聞きました。●●曲目がすごく参考になりました。アドバイスありがとうございます」
「このまえ助言していただいたので、Bメロを半分にしてみました。きゅっとしまって、ずいぶんよくなった気がします」
こんな感じで具体的な報告をする。きちんと感謝を述べる。
相手に時間があるようなら、その曲の修正バージョンを聞いてもらうのもいいだろう。きみのスマートフォンから曲データにすぐにアクセスできるようになっているといい。
相手も人間だ
きみが上記のような感じで話をすれば、たいていの人は、ちょっと嬉しい。それに『こいつは、言われたことをちゃんと実行するやつだな』とも思ってくれる。
会話のなかに出てくるちょっとしたアドバイスを実行する人は、ごくわずかだ。毎回実行しつづける人は、二割に満たないと思う。
不思議だけど、『ただの世間話』『やってもやらなくてもいいこと』と考えてしまうのかもしれない。
面倒なのはわかるけど、たいていの人がやらないからこそ、きみはやるべきだ。
そしてそれをくり返す。じわじわと、しかし確実に、きみに対する信頼は増していく。(同時にきみに対する好感度も上がる)
相手も人間だ。『きちんと実行する人』『それをうれしそうに話す人』には、さらにいいアドバイスをしたくなる。限られた時間のなかで、きみのことを真剣に、親身になって考えてくれることもあるだろう。
※『相手に好かれるために、無意味なことだけどやる』と考えるのはもったいない。以前は気づかなかった重要ななにかが見つかるかもしれない。そう考えて、意識をオープンにして、(無理にでも)楽しんで作業しよう。思いこみや忙しさが原因で盲点になっていることは、案外多いものだ。
信頼は仕事につながる。メモを取ることはその第一歩だ
次回のミーティングの日時を忘れて、あとからメールで聞きなおしているような人は、その行動で信頼を損なっている。約束を忘れたり、ドタキャンするのも同じだ。
小さな約束を、毎回きちんと果たそう。
これが『信頼を得る一番簡単な方法』だ。
『なんでもメモを取る』という習慣は、その第一歩になる。
信頼は仕事につながるよ。
音楽業界に限らない。どんな職業でもおなじだろう。プロを目ざすなら、大事な相手と信頼関係を築くことはおろそかにできない。
紙のメモ帳とスマートフォンのアプリ。どちらがいいか
個人的なおすすめは、手のひらサイズの紙のメモ帳とボールペンだ。
トラブルがほとんど無く、安心して使える。(万年筆、シャープペンシル、鉛筆は、途中で書けなくなる頻度がボールペンより多い)
スマートフォンのメモアプリには、いくつかの問題がある。
- メモアプリを立ちあげるまでに少し時間がかかる。相手を待たせることになる。
- 会話の最中にスマートフォンをいじると不快感をおぼえる人がいる。
- バッテリー切れ、データ消失、スパイウェアに感染、落とした拍子にモニターが割れて操作不能、などのトラブル
どうしてもスマートフォンを使いたいなら、メモを取る前に『すいません、スマホにメモを取らせてください』と断ってから操作をしよう。そして念のため、予備のメモ帳とペンのセットをいつもかばんに入れておこう。