目次
作曲・作詞をするメリット4 『活動の方向性のかじ取りができる』
これも大きなメリットだ。バンド内にきみしか作曲する人がいない場合、そのバンドは自然ときみの好み(目ざす方向、曲調、コンセプト)に沿う形になる。
シンガーソングライターの場合は、もっとストレートに影響が出る。作品がそのまま個性に直結するからだ。
仲間が居る場合、みんなで意見を出し合って、アイデアを取りいれるのも大切だ。だけど、作曲と作詞をしていれば、最終的なかじ取りをするのはきみになるはずだ。
そのうちまったく別の曲調、コンセプトに興味が出てきたら、それを形にしてみんなに提案することもできる。メンバーが難色を示すようなら、サブの活動として、別のユニットやバンドを立ちあげる、という選択肢もある。
曲作りができないと、基本的には「受け身」「待ち」のスタンスになってしまう。アイデアの断片はあっても、ひとつの作品として提示できないと、なかなか話は転がり出さない。
せっかくのバンド仲間だから、仲よく、長いつきあいができれば一番だ。でも、そのためにきみの創作の欲求を犠牲にするのはもったいない。
きみのアイデアや趣味に、みんなを巻きこむ。
きみがハンドルを握って、行きたい方向へ進んでいく。これが理想だろう。
そのためにも、オリジナルの曲(とできれば詞)を、きみ自身で生みだせるようになっておきたい。
作曲・作詞をするメリット5 『クリエイティブな作業に特有の、特別な楽しみを味わえる』
楽器の演奏は楽しい。特にだれかと一緒に演奏するととても楽しい。
作曲や作詞には、また別の楽しみがある。クリエイティブな作業に特有の『作る楽しみ』だ。曲や詞を作るようになれば、これが味わえる。
曲ができかけているときの興奮や感動は、なかなか他のことでは味わえない。
とりあえず、それなりの形になったときに『他の人はともかく、自分はいま自分が作ったこの曲が気に入った!』と思えたときの気分のよさは、格別だ。
まだだれにも聞かせていないのに、なんだか世の中に対して、いいことをしたような気分になる。きみが好きなだれかも、もしかしたらその曲を気に入ってくれるかもしれない。そういうことを想像すると、さらにしあわせな気持になるだろう。
作曲、作詞は、基本的にはひとりで行う行為だ。自分と向かいあって、自分のなかのどこかから、よさそうなものを引っぱり出してくる。心を静めて、手さぐりで、いいものを取りだす。
いつもうまく行くわけじゃない。そのうまくいかない時もふくめて、とても楽しい作業だ。
『創ること』について
すこし話がそれるけど『創作』『創造』というのは、今後とても重要なキーワードになると思う。AIが発達していけば、そのうち普通の仕事の大半は、人間がやらなくてもよくなる。そうなったときに、人間にのこされるもののひとつは『創ること』だとぼくは考えている。
AIはいつか、人間と同等か、それ以上の質の曲や詞を作るようになるだろう。でも『AIが作った曲に人間は共感できるか』さらに言えば『そのAIを応援したくなるか、愛せるか』といわれると、疑問がのこる。活路はそのあたりにあるような気がする。
ゾーンに入る。脳が活性化する。ストレス解消
- 楽器の演奏に慣れる(ほとんど無意識にコードが弾ける)
- オリジナルを10曲ほど作る
こういう段階に達したあとで作曲や作詞をしていると、精神がある状態に変化することがある。強いリラックス効果と興奮、カタルシスを味わえる。
運動選手が『ゾーンに入る』と言ったりするけど、それに近いのかもしれない。この感覚も、なかなかほかのことでは体験できない。
創作活動を終えると、頭がすごくすっきりしている。『なにか有意義なことをした』という充実感がある。
自分が作った曲や詞をたしかめて、『よくこんなものが自分に作れたな』とおどろいたりもする。
こういう体験は、体にも心にもいい影響を与えるはずだ。生命力が上がるというか、活力が湧くというか……それまで悩んでいたことが小さな、取るに足らないことに思えてくる。
作曲、作詞の最中の、具体的な感覚
上に書いた感覚について、もうすこし具体的に話してみる。
作曲の場合は、メロディーが空中から降ってくるような感じだ。
もしくは、自分のなかからメロディーとコードが同時に出てくるイメージ。(ぼくの場合は、その時々によって感じかたがちがった)
まだ曲の断片しかできていないのに、全体像がなんとなくイメージできる。メロディーと一緒に歌詞が出てくることがある。『このメロディーには、この言葉がぴったりだ』という確信が持てるときもある。
作詞は、作曲とは異なる。三十分ぐらいあれこれと考えたあとで、たったひとつの語句が出てくる。それをきっかけにして、ドドドドッと、あるべき場所に、あるべき言葉がはまっていく。
一度キーワードが出ると、そこからは早い。次から次へと、ぴったりの語句が浮かびあがってきて、はまっていく。
その曲のストーリーが見えて、どんなことが起こるか、主人公がどんなことを感じるか、全体の展開が一度にわかってしまうこともある。
これはなにも、特別なことじゃない。きみも、
- それなりの情報を吸収して(おぼえている既存曲の数。最低限の研究)
- 楽器を演奏することと、作曲や作詞をすることに慣れれば
味わえるはずだ。
作りながら、自分で感動することもある
ある作家は執筆中、自分で作りだしたキャラクターに感情移入しすぎて、泣いてしまうことがあると言っていた。あまりにも感情がたかぶると、よくない影響があるから、冷静さをたもつために努力する、と話していた。
作曲、作詞をしているときも、同じようなことがある。曲を作りながら、コードを弾いてハミングしていると、その曲の出来に自分で感動することがある。詞を作りながら、曲中の物語性に感情が揺さぶられてしまったりもする。
きみも映画やドラマを見て、感動したことがあると思う。あの状態に近い。他人の作品ではなく、自分が現在進行形で作っている作品で、そういう感情の動きを味わえる。これは、また格別な体験だ。
そしてもちろん、その曲をきちんと形にして、だれかが同じように感動してくれたら、きみはものすごくうれしく感じる。たぶん、いまきみが想像しているよりもずっと強く、充実感とうれしさを感じるはずだ。