オリジナル曲のメロディーにフレーズ感を出す方法

作曲しているときや、ギターやベースのリフを作っているときに、

  • なんだかイマイチだな
  • パッとしないな

と思ったことはないだろうか。

  • どうものっぺりしている
  • だらだらしていて気持ちよくない
  • 自分で作っているのに、すぐにそのメロディーを忘れてしまう

こういう状況だとしたら、そのメロディーにはフレーズ感が不足しているかもしれない。

フレーズ感とは

これが、説明がなかなか難しい。感覚的にはすぐにわかると思うけど、言葉にしにくい。

ぼくの周囲にいたミュージシャンは、よくこの言葉を使っていた。プロもいたしセミプロもアマチュアもいたけど、「この部分のメロディー、なんだかだらだらしているなあ。もう少しフレーズ感がほしいな」って感じで使っていた。

「もう少しフレーズ感がほしい」という言葉を言いかえると、『より明確に、鮮明に、印象にのこる感じにしたい』ってことだ。

具体的に言うと

    • リスナーの注意を引く
    • 印象にのこる
    • 記憶にのこる
    • すぐに口ずさめる

    これが、いいメロディー(フレーズ感がある旋律)の特徴だ。
    自分でこういうメロディーやリフが作れたらいいよね。

    フレーズ感を生み出すと、こんなにいいことがある

    特にフレーズ感を入れたいのは主メロ(主旋律。ボーカルが歌うメロディー)だ。
    主メロにフレーズ感があると、

    • 力強い曲になる
    • リスナーの注意を惹きつける吸引力が生まれる
    • こういう曲は、ポテンシャルが高いと言える

    アレンジもしやすいし、詞も乗りやすい。ライブでも盛りあがる。
    さらに、テレビ番組などの主題歌に使われる可能性も上がる。

    そういう曲に対してリスナーは、

    • なんだか気になる
    • いい感じ。好きかも
    • もう一回聞きたい!

    と感じる。みんながみんなというわけじゃないけど、確率はかなり上がるはずだ。

    フレーズ感がある曲は『なぜか一緒に歌いたくなる曲』だ。

    時間が経っても、リスナーの記憶にのこる。

    『好きだと思われる可能性、ヒットの可能性』を秘めた曲だ。

    またライブ中にも、効果がある。

    • リスナーの注意を引きつける
    • 夢中にさせる
    • それを継続する

    いいことずくめだから、ぜひフレーズ感を生みだすノウハウを知り、身につけて欲しい。

    今回は主メロをメインに考えてみる。(他楽器のリフやソロに関しても基本は一緒だよ)

    主メロにフレーズ感を出す方法……歌って作る

    歌って作ると、それだけでフレーズ感が生まれる。

    コードを弾きながら、体感的に気持ちの良いメロディー(フレーズ)を探っていくことになるからだ。

    できればてきとうでもいいから、詞も同時にはめながら作りたい(もちろんあとで変更してもかまわない)。

    歌いやすくて、歌っていて気分のいいフレーズには、自然とフレーズ感が備わっていることが多い。

    ここから先は、以下の3つの要素について話す。

    • 休符の入れ方
    • 音の高低のエリア
    • 符割り

    「歌って作る」こと以外では、この3つが三大要素と言える。

    主メロにフレーズ感を出す方法……休符を入れる

    勇気を出して、多めに休符を入れよう。

    初心者は、これが苦手だ。最初はどうしても音を詰めてしまいがちだ。

    いろんなミュージシャンの曲――それも時代を代表するようなヒット曲をいくつも研究すれば、『ボーカルが歌わない部分』が多いことに気づく。

    だらだらつづく旋律に、フレーズ感は生じない

    長すぎる旋律は、人の記憶にのこらない。自分で作っているのにすぐに忘れしまうようなメロディーは、改善の余地がある。

    記憶にのこらないどころか、『退屈だ』『つまらない曲だな……』『それはもういいから、早く次に行ってよ』なんて思われる恐れもある。

    たとえばAメロなら、出だしの部分(1小節目、3小節目、5小節目、7小節目、それぞれの頭の部分)に、意識的に休符を入れてみよう。

    思いきって1拍~2拍半ぐらい、歌わない部分を作る。

    それだけで、ずいぶん印象が変わるはずだ。

    主メロにフレーズ感を出す方法……音と音の高低を意識する

    一連のメロディーのなかの、となりあった音同士の高さに注意する。

    たとえばド→シ→レ (シ、の音がドとレよりも高いと思ってほしい)

    こういう感じで音が飛びすぎると、フレーズ感は生まれにくい。

    ※あえてそういうことをやる曲もあるけど、二度も三度も使えない技だ。

    サビの頭、一番の聞かせどころでは思いきって飛ぶのもありだけど、それ以外の箇所はある程度近い方がいい。

    たとえばAメロなら、隣り合っている3音、4音ぐらいで、「ミミレミ ファミレド」ぐらいのほうがぼくはいいと思う。

    • 詞も乗りやすく、歌いやすい。
    • リスナーもすっと曲に入っていける。
    • シンプルなメロディーだと、アレンジもしやすい。

    ※符割りやテンポの問題もあるから一概には言えない。説明のための例だから、そのつもりで

    オクターブ飛ばし

    ただし、上記の話には例外がある。
    オクターブ移動する(たとえばドの音から1オクターブ上のドの音へ移動する)

    これはとても強烈なフレーズだ。サビの冒頭で使われることが多い。

    少しわざとらしかったり、古くさいと感じるかもしれないけど、Bメロからの流れがうまくはまると、破壊力抜群のフレーズになる。

    メリハリを作る。

    Aメロ用に、四小節でワンセットのフレーズを作るとする。

    おなじような符割り、同じような高さの音がつづくのは避けたい。ダラダラした印象になってしまうからね。

    たとえばこんなやり方がある。(音の長短と高低、 休符の位置と長短 を意識してほしい)

    • 1、2小節で前半フレーズ、3、4小節で後半フレーズとする。
    • 前半、後半で緩急を付ける。

    そのために

    1. 前半は、冒頭に休符を。それから細かい音をつづける。
    2. 後半は、少しゆったりした音の連なりにする。

    また、

    1. 前半は低い音を使う。
    2. 後半は、少し上の方の音も使う。

    こんな感じで、前半・後半(まえ2小節・うしろ2小節)にわけてフレーズを考える。

    4小節のフレーズをもう一度くり返したら、Bメロに行く。(A・B・サビ構成の場合)

    もしくは8小節目で少し変化を加えてサビへ突入する。(A・サビ構成の場合)

    Aメロ、Bメロ、サビそれぞれのパーツでも、

    • 休符の入れ方
    • 音の高低のエリア
    • 符割り

    でメリハリを作る。

    前半部分を高い音にしてもいいし、長めの音を使ってもいい。
    やりかたはいろいろある。

    大事なのは、『リスナーが飽きるまえに、ちがうことをやる』ってことだ。

    素材を詰めこみすぎないように

    ただし、次から次へとちがうタイプのメロディーを出すのはおすすめしない。

    素材が多すぎると、リスナーはついてこれなくなる。情報処理のキャパシティーを越えると、聞いているのが負担になってしまうんだ。『よくわからない。疲れた。もういいや』と思われないようにしよう。

    各部分(Aメロ、Bメロ、サビ)で使う『メロディーの素材の数』に気を配る。この『素材の数』という観点からいろいろな曲をチェックすると、気づくことがあるはずだ。

    たいていの曲では、

    • Aメロは『2つの素材』とそのバリエーションで形成されている。
    • Bメロは小節数にもよるけど『1つ、もしくは2つ』+バリエーション
    • サビは『メインが1つ。サブが2つ前後』+バリエーション
    • サビラストに(場合によっては)『別の素材』

    といったところだろう。

    例外はもちろんあるけど、だいたいこんな感じだと思う。

    素材の数に関しては、リスナーが「もうちょっと欲しい、と思うぐらいで止める」ことを意識するといい。ある程度高級な料理屋さんなんかをイメージするといい。

    ギターやキーボードの演奏では

    基本的な考えかたは同じだ。

    ただし曲中では、メインはボーカルだ。ボーカルを引き立てることを優先する。

    フレーズ感という意味では、ボーカルがいない(休符のとき)に、さらっとオブリを入れるところが見せ場だろう。

    有名曲でも、曲中のギターの演奏だけ(もしくはキーボードだけ)を取りだすと、カッティングやアルペジオがメインで、たいしておいしいことをしていない場合がある。

    それはそれでかまわない。ただし、腕利きの編曲家がアレンジした曲は、各パート共に、随所に光る部分があったりする。理想型として、そういう作品もある、ということを頭に置いておくといい。

    ソロに関して

    基本的には、同様の考えかたでOKだろう。しかし残念ながらぼくはプロのプレイヤーではないから、断言ができない。プレイヤーごとに、様々な考えかたがあるようにも思う。

    たとえばジミ・ヘンドリックスはある時期から、フレーズ感よりも自分の内奥の衝動を表現することを優先していたのではないか。

    (このテーマについては、今後プロのプレイヤーにインタビューをして、記事にしたいと思っている)

    もしきみが楽器の演奏をメインに音楽活動をしているなら、様々なプレイヤーの演奏を聞き比べてみてほしい。

    • 曲中のそれぞれの部分で、どんなことをしているか
    • 一番、二番、その後での変化
    • ソロでは、どんなことをしているか。
    • ソロパート内での起承転結

    メモを取りながら研究してみる。

    特に、世界的な実力者の演奏を研究するのは、とても勉強になるはずだ。個人的には、熟練者ほど『あえて弾かない』という選択をする印象がある。

    フレーズ感、その他のメモ

    緩急

    フレーズ感満載のメロディーがずっとつづくと、それはそれで疲れてしまう。なにごとにも緩急が必要だ。このあたりのさじ加減は次第に身についてくる。

    主メロの例をひとつ

    極端だけど、有効な例をひとつ挙げてみる。Aメロやサビで、1~2小節でいいフレーズを出す。そして3~4小節は一切歌わない(全休符ふたつってことだ)。こういう曲を作ってみよう。メリハリは当然生まれる。そしてギターやキーボードが活躍する場も生まれる。
     

    聞かせどころは一箇所

    曲の一番の聞かせどころはサビだ。特にその冒頭部分だ。そこを目立たせるために、AメロやBメロはあえて地味にする。
    その場合でも、リスナーを飽きさせないための、最低限のフレーズ感は必要だ。これが難しい。

    そのあたりのバランスは、過去の名曲を研究してみよう。慣れるにしたがって『これぐらいでちょうどいいな』というバランスが取れるようになってくる。