前回の記事で、初めて人まえで弾くときのコツを話した。
今回はライブの前日までと、当日のうまい過ごし方について話す。
ちょっとしたことだけど、つまづきを避けられるかもしれない。ざっと読んで、一部を取りいれるのもいいと思う。
目次
ライブ前日までにやるべきこと、ざっくりまとめ
- MCも含めた通し練習をする
- 「持っていくものリスト」を作る
- 美容院に行く
- 衣装を用意する
通し練習について
人間の集中力は、そう長くはもたない。
初ライブの演奏となると、想像以上にエネルギーを消耗する。1、2曲しか演奏しないなら勢いで乗り切れるだろう。学校の文化祭や音楽スクールのライブなら「演奏2曲」程度が普通だと思う。
もし初ライブがライブハウスで行う他バンドとの対バンなら、5~6曲は演奏することになる。これは注意が必要だ。早い時期から通し練習をして、体を慣らしておかないといけない。6曲演奏するとなると、20分前後は人まえで弾きつづけることになる。
1曲ずつ練習するとミスがないのに、通しで練習すると集中力が切れてきて、最後の曲でミスが出る。こういうことはある。
ただでさえ人まえで弾くと緊張するものだ。
- ふだんはやらないミスをする
- 時間の経過とともに集中力が減っていく
ここをふまえて練習をしよう。
MCも練習する
初ライブなら通し練習をする時に、MCの練習もしておこう。
本番で数十人の観客がいたら、たいていの人はアガる。
話すべきことを忘れたり、かんだり、ぼそぼそと早口で話して済ませてしまったりする。こういう事態を避けるために、演奏だけでなくMCの練習もする。(慣れたらぶっつけ本番にしてもいい)
MCのリハーサルは、恥ずかしいから適当に済ませがちだ。でも、あとで後悔しないように、きちんとやろう。役になりきる感じで取り組むといい。
きみ以外のメンバーがMCをやるなら真剣に見まもる。ちゃかしたり、笑ったりしないように。他のメンバーたちと話して、事前にそういう雰囲気を作っておこう。
通し練習にゲストを呼ぶ
もし可能なら、通し練習の時に、友人に遊びにきてもらおう。
大きめのレンタルスタジオならメンバーとは別に十人ぐらいは入れるだろう。
初ライブの前に、「観客の前で弾く」ことに慣れておく。これはとても効果がある。
「持っていくものリスト」を作る
これもお勧めだ。ライブのときは荷物が増える。そのうえ、髪型や服装にも気を使わないといけない。予想外に時間を取られるものだ。自然、忘れものをしやすくなる。
会場に着いてから「あれがない!」と気づき、さらに手持ちが少ないことに気づいて友人にお金を借り、近所の楽器屋を調べ、走って買いに行く――こんなドタバタのあとでは、まともな演奏はなかなかできない。
それに、頭の中だけで持っていくものを完璧にチェックするのは、面倒だし疲れるよ。ライブに注力するために、余計な体力は使わないようにしよう。
プロも忘れものをする
余談だけど、ぼくの師匠はプロになってから二十年以上経っているのに、ライブのとき高確率で忘れものをする。
- 替えの弦がない
- チューナーを忘れた
- シールドを忘れた
- 歯みがきセットがない
本業がプロデューサーと作曲家だし、忙しくて前夜遅くまで作業していたりするから仕方がない面もある。年に数回しかライブをしない、ということも関係があるだろう。本人に聞いたことはないけど「忘れものをする」前提で準備をしているような節もある。
彼はプロだから、周辺にいるスタッフに頼んで、忘れたものの代用品を買いに行ってもらうことができる。ぼくも何度か、近所の楽器屋までお使いに行った。本人は落ちついたもので、動じた様子もなく、ゆったり過ごしている。
まあ、これはちょっとした雑談で、特殊なケースだ。初ライブのときは、よほど肝が据わっているツワモノ以外は、彼の真似はしないほうがいい。
「持っていくものリスト」の例
ギタリストなら、最低でもこれらは必要だろう。
- 楽器
- 譜面など
- メモ帳とペン
- シールド (予備も)
- ピック (予備も)
- チューナー(予備も)
- 替えの電池
- 替えの弦
- タオル
- ウェットティッシュ
- 歯みがきセット
- ミネラルウォーター
- 衣装
- 香水や制汗スプレー
- 整髪料
- スマートフォンの充電器
シールドやチューナーの予備は、できればあったほうがいい。
当日、いきなりそれらの調子が悪くなる、ということだってあり得るからね。
初ライブとなれば、トラブルのひとつやふたつはあるものだ。その前提で、できるかぎりの準備をしておこう。
いざトラブルが起こったら、あわてずに落ちついて考えて、冷静に対処する。
ライブ前日にやるべきこと、ざっくりまとめ
- リストを見ながら、支度をする
- 早めに風呂に入る
- 早めに夕食を済ませる
- 早めに寝る
じたばたしても仕方がない
本番前夜まで来たら、じたばたしても仕方がない。練習はもう充分したはずだ。
明日のためにできる最良のことは、よく寝ることだ。睡眠不足はきみの能力を下げる。専門医のなかには「睡眠不足の状態は、酒に酔っている状態とよく似ている」と言う人もいる。
研究結果の記事その1 その2
眠りが足りないと、これらの質にも影響があるはずだ。
- 注意力
- 生産性
- 集中力の質と持続時間
- 反射神経
- 精神力
- 機転
- 交渉能力
- ほがらかさ
- 理性
- 計算能力
よく眠ることを優先しよう。緊張してなかなか眠れなくても、「横になってボーっとしていれば、身体も脳も休められる」と考える。
スマートフォンをいじるのは、絶対にやめたほうがいい。眼が覚めてしまう。音もバイブもオフにして、目につかないところに置いておくべきだ。
起きだして楽器にさわるのもお勧めしない。おさらいをしたければ、当日やることにしよう。
ライブ当日にやるべきこと、ざっくりまとめ
- 一日、早め早めの行動を心がけよう
- 現地には本番開始の5、6時間前に着いておく
- 同時に、ひとつひとつの動作はゆっくり、ていねいに。これで体と心がほぐれていく
- 本番終了までは、水分をとりすぎないように
- ライブハウスでの音出し、返しのチェックは慎重に
- 照明やPAさんへのリクエストはていねいに、しかしはっきりと
- 雰囲気に飲まれないように
- わからないことはしつこく聞いて確認するように
- チェックが済んだら、ゆったり過ごそう
- 30分程度の仮眠を取るのは有効だ
- 控え室の状況によるけど、可能なら出番の30分ぐらいまえから、ストレッチや軽い筋トレをしよう
- 深呼吸をくり返しながら「ミスもするさ」「でも、楽しく演奏しよう」と考える
- 「お客さんはミスしても顔に出さなければ気づかない」「気づいてもすぐに忘れる」「これですべてが決まるわけじゃない」――この三つの呪文を唱えるのもいい
早めに現地に到着しよう
早ければ早いほどいい。ぼくはこれがもっとも大切だと思う。
もしきみが遅刻をしたら、他のメンバーが困る。渋滞にはまったり、電車がとまったり、急にお腹が痛くなったりするかもしれない。しかしこれらは予想できるトラブルだ。こういうことが起こって遅刻した場合、責任はきみにある。
それ以外の不測の事態が起こっても、なんとか現地に時間までにたどりつく。そのつもりで早めに起きて、支度をすませ、家を出よう。
その他についてはケースバイケースなことも多い。落ちついて、ゆったり行こう。気持と時間にゆとりがあれば、たいていのことはうまくいく。わからないことがあったらライブハウスのスタッフさんやメンバーにきちんと聞いて、事前に確認しよう。雰囲気に飲まれて、不透明なまま話を流してしまわないように。
貴重な体験。笑い話
人まえで演奏することも、演奏前に緊張してドキドキすることも、とても貴重な体験だ。当然、音楽をやっていなかったら味わえない。
おそらく初ライブの記憶は、生涯忘れることがないだろう。
不運が重なって大失敗をやらかしたとしても、数年も経ったら笑い話になる。初ライブのことを思い出すときは、バンドメンバーのことも一緒に思いだすはずだ。
いい体験を共有できるよう、みんなで仲良く、楽しくやることを心がけたい。
初ライブのあとで
出来がよくても悪くても、きっときみは「もっと練習したい」という気持になっていると思う。
がんばって、たくさん練習しよう。ただし休憩はしっかり取りながら。(休憩の重要性については、別の記事にするつもりだ)
できるだけ早く次の目標(二度目のライブ)の予定を立てるといい。目標があると、内容の濃い、いい練習ができるものだからね。